学術集会長挨拶
この度、第20回日本生殖看護学会学術集会の会長を務めさせていただくにあたり、ご挨拶をさせていただきます。本学術集会は昨年に引き続き新型コロナウイルスの感染状況を鑑みオンライン開催とさせていただくことに致しました。
今回のメインテーマは、「SDGsの視点から性と生殖の健康支援を再考する」としました。SDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)は、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会を目指し、2015年に国連サミットで採択された17の国際目標です。
SDGsと聞くと、日常の看護実践の中では意識しにくい大きなテーマのように感じることもあるかもしれません。ですが、目標をひとつずつ確認してみると、私たちの生殖看護に関わることが大変多いことに気がつきます。
例えば、「3.あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」の中には具体的に「2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスを全ての人々が利用できるようにする。」というターゲットが設定されています。「4.すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」では性教育やプレコンセプションケアの充実、「5.ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」では、女性であることが性と生殖の健康を脅かさないための支援、「8.すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する」においては不妊治療と仕事との両立、「11.都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする」では、街全体で住民の性と生殖を守るサポート、「16.持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する」では、どんな人も自分の性と生殖の健康についての選択が公平にあるべきであることへの支援の必要性が挙げられています。こう考えてみると、17つの目標のうちの多くが私たち生殖看護を担うものたちが携わることのできる目標だとわかります。
また、私たちの生活環境は大きく変化しています。未曾有の感染症が猛威を振るい、私たちはさまざまな制限の中で暮らすようになりました。不妊治療を受ける方の受診環境にも変化がありました。さらに、IT技術が一般化され、オンラインでの受診や相談が可能になり、制限のある環境の中でも医療や看護へとアクセスすることが可能になりました。そして、いよいよ2022年4月より不妊治療の保険適用化が開始されます。
このように私たちが支援すべき方々の環境が大きく変化する今、私たちは何をどう考え、どのように支援することが望ましいのか。私たちの支援の可能性が大きく広がり、また豊かになることで「だれ一人取り残さない」社会への実現に近づけるのではないかと考えています。
ぜひこの第20回日本生殖看護学会学術集会へのご参加をお待ちしております。
2022年2月吉日

学術集会長 西岡 有可
(不妊症看護認定看護師/株式会社ファミワン)